契約書入門
みなさんは、契約というとどんなことを思い浮かべるでしょうか?
日常の家庭生活では契約のことを意識することはほとんどないので、お勤め人の方であれば、やはり勤め先の仕事上で目にする契約書のことが多いと思います。けれど、この契約書が何のためにあるのか、考えたことがありますか? 今回は、契約の目的や役割を考えて頂くことで契約の大切さを知って頂こうというそんな話です。
○契約とは何か?
契約とは、法律的な言い方では「意思表示の合致」といいます。お昼にラーメン屋に行って「広東麺下さい」というと、これを「申込の意思表示」といい、店員が「はい、分りました」といえば、これを「承諾の意思表示」といって、契約はこれで成立します。
お店は、お客に広東麺を提供する義務(これを債務といいます)が発生し、お客は代金を払う義務があります。言い換えれば、契約は、お互いの約束の合意ともいえます。この場合、単なる口約束でも、立派な契約です。電話でのやりとりでも法律的には要件を満たすことになります。では、契約書は何故、必要になるのでしょうか?
○契約書の役割
当たり前のことですが、単なる口約束では証拠が残りません。証拠がないと、言った、言わないの世界になってしまいます。これが友達同士のCDの貸し借り程度のことならば、お互いの信頼関係があればなんとでもなるでしょう。しかし、事が例えば企業間取引ともなると、信頼関係だけではどうにもならなくなります。
仕事が全て順調で、必ずノークレームで終わることが約束されているならば、それでもよいのかもしれません。でも、そんなことはありえない訳で、トラブルは、いつ、どのような形で発生するか、だれも予測はできません。従って、企業活動においては、契約書を事前に取り交わすということは大前提になるわけで、契約書はまさにトラブルのための”備え”です。
トラブルが起きた時には、どのように解決するのか、それをお互いに知恵を絞り合いながらあらかじめ合意しておいて、いざという時には、合意した約束通りに物事を解決しようという双方の意思を実現したものが契約書です。もし、トラブルが起きた時に契約書がなかったら、あるいは契約書があったとしても、そのトラブルに適用できる取り決めがされていなければどうなるか、想像してみて下さい。おそらく、裁判所に持ち込んで判断を仰ぐことになってしまいます。そうなると、争いを解決するために大変な労力と費用を掛ける事になってしまいます。もし、これが契約書に明記されていれば、裁判に持ち込むことなく、お互いに当事者同士で解決できます。契約書は、まさにそのためにあるのです。
○契約の知識
みなさんの勤め先での仕事は、法令に基づき全て何らかの形式で契約に基づいて行われています。契約に関わりのない仕事というものはありえない訳です。従って、取引契約書をどのように作成し、取り交わせばいいのか、どんなことに注意すればよいのか、その基本的な知識を身につけることは、とても重要です。今後、契約にまつわる知識と話題を様々な形で提供していく予定です。ときどきはお立ち寄りください。