自動車の登録手続

我が国は車社会

 我が国は世界でも有数の自動車生産国であり、自動車の普及は目覚ましいものがあります。 平成31年3月末の自動車保有台数は約8,179万台(乗用6,177万台、貨物用1,438万台、その他773万台)に達しており、この10年間で凡そ298万台増加しています。 貨物用自動車は、減少傾向にありますが、貨物用以外の乗用車は増加傾向にありましたが、中でも軽4輪自動車は、約544万台増加しており、この10年間で34%の伸び率です。(一般財団法人自動車検査登録情報協会統計資料より)  我が国は、自動車の著しい普及により、様々な分野で大きな変貌を遂げており、今や自動車を抜きにして経済生活を維持することはできません。通勤はもとより、買い物一つとっても、もはや自動車抜きでは成り立たないことは、ご存じの通りです。自動車と経済・生活との結びつきは、車社会の成長とともにより一層強くなっており、単身の若者の車離れが話題になったりはしていますが、家族を営む世帯にとっては、欠かせない道具であることに変わりはありません。このことは、同時に自動車に関する行政が果たす役割の比重も、ますます高まっているといえるでしょう。近年では、高齢者ドライバーの事故の増加への対応が大きな課題となってきていますが、これも行政がしっかりと音頭取りをして、安全な車社会の実現に向けて、施策を講じることが求められているといえるでしよう。

車社会と自動車検査登録制度

 自動車は、公の道路において不特定多数の人に利用されるものである一方で、走行中に事故を引き起こす危険性及び排気ガスや騒音による公害を惹起するおそれをもともと内在しています。これらの問題は、自動車技術や各種の公害対策、道路行政によって軽減されてきましたが、いまだ根絶されたとは言い難い状況です。そのため、排ガス規制は、厳しさを増しており、低公害の電気自動車の開発は、地球温暖化対策の必要性に迫られて待ったなしの状況です。  また、自動車の放置や自動車事故、自動車による犯罪等も社会に大きな影響を及ぼします。とくに自動車事故は、自動車が人の運転技術に依存する乗り物である限り、避けがたい負の要素として、存在し続けることになります。この自動車事故の被害者救済のために、法定の自賠責保険をはじめとした各種保険制度が存在しますが、これらの制度は、公道を走行する全ての自動車が識別され、責任を負わせるべき加害者が特定される仕組みがあまねく整っていることを前提としています。そこで、一台一台の車を識別する登録制度が必要とされるのです。  
 自動車は、また財産としての価値を有しています。必ず財産権を保有する所有者が存在します。しかし、自動車は大量生産されるものであり、また移動するものであるため、外形上は、誰のものかを特定するのは困難です。仮に自動車に社名や団体名がペイントされていたとしても、真の所有者は、その外観通りとは限りません。このため、個々の自動車を制度的に識別し、所有者、使用者等を判別し得るようにしなければ、自動車に対する公的、私的な権利義務関係の確定が困難となります。これは、不動産である土地や建物の登記制度に似た仕組みです。公道を走行する全ての自動車に、安全に走行する機能と品質を確保していることを検査によって証明し、必要な保険の付与を受けた自動車の登録を義務付けることによって、自動車の所有者をはじめとする権利義務の当事者を漏れなく確定できるようにする仕組み、これが自動車の検査登録制度です。  
 この自動車検査制度の不動産登記制度との大きな違いは、公示の仕組みを持たないことです。不動産は、誰でも手数料さえ支払えば登録情報を照会できますが、自動車の登録情報は、その情報を必要とする者にしか開示されません。  自動車検査登録制度は、車社会を支えています。自動車を検査し登録することにより、自動車の安全確保・公害防止が図られるとともに、個々の自動車の識別が可能となり、所有及び使用の実態が制度的に把握されます。検査・登録を受けることによって、自動車は初めて社会的に認知された乗物となるのです。自動車検査登録制度は、運転免許制度と並んで、巨大化していく車社会の秩序を支える大黒柱のような仕組みです。

道路運送車両法に基づく検査登録の役割

 自動車の登録には、 「所有権の公証」という民事登録と「自動車の保有実態の把握」という行政登録の二つの目的があります。  
民事登録というのは、自動車の 所有権を公証し、第三者対抗要件を与えることにより、ユーザーの所有権を保護し、車についての法的安定性を確保することにあります。全ての自動車に登録を義務付けることによって、所有者不明の車をなくし、自動車の流通の安定と円滑化が図られるわけです。  行政登録というのは、登録した車にナンバープレートを交付し、自動車の識別を可能にすると同時に、個々の自動車の保有実態を行政的に把握することによって、行政権の円滑な行使を可能にする仕組みです。とくにこのナンバープレートは、完全に一台一台の車を識別可能とすることによって交通事故の予防、事故紛争の解決に利することの大きい制度です。封印制度と相まって、これを簡単に取り外したり、偽造したりできなくすることに大きな意味があります。  
 自動車は、自動車の構造・装置を定期的にチェックすることにより、自動車の安全を確保し、公害を防止するとともに 円滑な道路交通の確保と省エネルギー化を図ります。自動車を安全で、公害をもたらさない状態に維持しておくことは、使用者の社会的責務といえます。道路運送車両法では、「道路運送車両の保安基準」を定め、この保安基準に常時適合させることを義務づけています。  
  一方で、自動車は、走行することにより、また、使用期間の経過等に伴ってその構造・装置の劣化、摩耗をさけることはできません。このため自動車の同一性と保安基準適合性について定期的に検査を実施する必要があります。検査制度は、自動車の諸元(大きさ、重量、排気量等)の確認と安全の確保、公害の防止を制度的に担保するための必要不可欠な手段であるわけです。

検査登録の仕組みと種類

 自動車が公道を走行するためには、検査登録が必要です。さらに登録自動車は、ナンバープレートを車体に取付け、封印を受けなければ運行の用に供することはできません。この登録には、以下の4種類の手続きがあります。
    

新規登録 新車・中古車でナンバーのついていない車を登録する場合
変更登録 氏名・住所・使用の本拠の位置などを変更した場合
移転登録 自動車を売買等により譲渡、譲受する場合
抹消登録 自動車の使用をやめたまたは解体等をした場合


 当事務所では、これらの手続きをOSS(インターネットを通じた自動車登録手続のワン・トップ・サービス)を使用して、迅速かつ効率よく、また紙ベースの手続よりも低コストで手続きを代行します。

登録の手続き

 登録を受けようとする場合には、申請書(OCRシート)のほかに各種書類を添付又は提出する必要があります。(OSSの場合は、電子申請が原則)  例えば、新規検査登録申請の場合は、次のような書類が必要です。  
    ●申請書(OCRシート)   
    ●手数料納付書   
    ●完成検査終了証   
    ●譲渡証明書   
    ●印鑑証明書   
    ●委任状   
    ●自動車重量税納付書   
    ●自動車保管場所証明書(車庫証明)   
    ●自動車損害賠償責任保険(共済)証明書
 このほか、自動車税申告書、自動車取得税申告書を都道府県税事務所に提出し、これらの税を納付する必要があります。

検査の手続き  

 検査対象自動車は、国(軽自動車については民間法人である軽自動車検査協会)の検査を受け、自動車検査証を備え付けていなければ運行の用に供することはできません。  
 道路運送車両法において、自動車の保守管理責任はユーザー自身にある(自己管理責任)ことが定められており、自動車ユーザーには、日常点検と定期点検が義務付けられています。一度検査に合格したから有効期間内は故障もしないから点検をしないなどと過信せず、ユーザーは日常的なチェックを怠ることなく、自動車の安全の確保、公害の防止に努めなければなりません。  個々の自動車が安全・環境の基準に適合しているかどうかを、国が一定期間ごとにチェックするのが自動車の検査です。この検査に合格して有効な自動車検査証の交付を受けていなければ運行することができません。検査には、整備工場に点検整備とともに検査手続きを依頼する方法と、ユーザー自身等が検査手続きを行う方法とがあり、いずれかをユーザーが選択します。なお、軽自動車については、軽自動車検査協会において同様な検査が行われています。 この検査が終了すると自動車検査証(車検証)が交付され、自動車が前項の登録を受けることが可能となる仕組みです。車検証の有効期間は、自家用乗用自動車の場合、初回が3年、2回目以降は、全て2年と定められています。ちなみに、バスやタクシーなどの旅客運送事業用乗用車は、初回から全て1年です。自動車検査の主な種類と内容は、以下の通りです。
    

新規検査 新たに自動車を使用するときに受ける検査
または、いったん使用することを中断する手続きをした自動車を再び使用するときに受ける検査
継続検査 自動車検査証の有効期間満了後も引き続き自動車を使用するときに受ける検査
構造等変更検査 自動車の長さ、幅、高さ、最大積載量等に変更が生じるような改造をしたときに受ける検査
街頭検査 整備不良車や不正改造車等の排除のため路上等において行われる検査


*上記以外に、予備検査、臨時検査があります。

登録費用

 自動車の登録に必要となる費用は、登録検査の種類によって異なりますが、大まかには下記の費用が最低限、実費費用として必要になります。    ●登録手数料 新車新規登録の場合:900円(OSS申請:500円)
           中古新規登録の場合:700円  
    ●検査手数料 運輸支局等への持込検査の場合