コンプライアンスの基本

 コンプライアンスの意味について考えてみたことがありますか?
 最近は、コンプライアンスの言葉の意味を尋ねて答えに窮する人は少なくなったと思われますが、大抵は、「法令遵守のことだ」と思っている人が多いようです。これは、間違いではありませんが、実は十分ではありません。
ComplianceはComplyの名詞形で「従うこと」という意味になります。一体、“何に”従えばいいのでしょうか?
法令に従うというのは、あまりにも当たり前で、「法令遵守」というと法律さえ守っていれば良いというニュアンスが感じ取れるのです。
実は、“ステークホルダーからの要請”に従う、というのが正しい答えです。
ステークホルダーは直訳すると、「利害関係者」ということになりますが、このステークホルダーには、企業であれば、顧客、取引先、株主、従業員とその家族、地域社会、政府、自治体などが含まれます。ここには、会社の行動によって影響を受ける全ての人々が含まれています。単に「シェアホルダーズ(=株主)」の期待にこたえるだけでは不充分で、これらの人々(団体)からの要請に応えていくというのが、コンプライアンスの本質です。言い換えれば、コンプライアンスは、今日では、法令に従うことはもとより、社会の常識や良識(社会規範)に従い、ステークホルダーからの様々な要請に応えることを通して、企業の社会的責任を果たしてゆく、その活動の前提をなしていると幅広く理解されてきています。
 それでは、コンプライアンスを実践していくには、どうすればよいのでしょうか?
 「コンプライアンスを実践している」と言葉でいうのは簡単ですが、実は上記の様々なステークホルダーの期待に全て応える意思決定を行い、活動を継続するのは容易ではありません。ステークホルダー間の相反する要請のバランスをとり、うまく折り合いをつけて、最適解をいかに見つけるか、ということにいつも経営者は頭を悩まされているのです。ともすれば、株主や顧客ばかりに目が向きがちですが、私たちが地域社会において周辺の住民との共生関係にあることも忘れてはなりません。また、利益を追求するあまりに、取引先に無理な要求を突きつけて下請法や独禁法に抵触するような行動を取ることも厳に慎まなければなりません。環境を守る取組みと会社の収益の向上を図ることとは、ともすれば相反する活動と捉えがちでしたが、今や環境保護は、収益獲得の前提条件となっています。コンプライアンスの課題も、時代とともに変わりゆくものといえます。今後、継続してコンプライアンスにまつわる具体的な話題を提供していく予定です。

2019年06月20日